だから言ったのに

『森の奥には心を奪う恐ろしい魔女が住んでいる。心を失いたくなければ森の奥には絶対に入ってはいけないよ』
大人達はそう言って子供達を怖がらせる。実際、村には魔女に心を奪われた人が何人もいる。
大人達は口を酸っぱくして言う。子供達を守る為に。
しかし、好奇心旺盛な子供達は大人の言いつけを破り、魔女に会いに行こうとする。
そこで子供達は目にするのだ。恐ろしい魔女の姿を…
「あら、いらっしゃい。可愛いお客様ね。お菓子はいかが？ジュースもあるわよ」
子供達は呆然とする。その、恐ろしいまでに美しい魔女の姿に。
「いつでも遊びにきていいわよ。お姉さん、いつだって皆を大歓迎しちゃう！」
子供達は心奪われる。底知れぬ魔女の優しさと包容力に。楽しい一時に。
魔女のもてなしを受けた子供達。美しく優しいお姉さんに骨抜きにされた子供達。また会いたいな…と口々にする子供達。
『だから言ったのに…』
大人は頭を抱えた。