泣き虫

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えーん、えーん

ボクの胸の中には、虫がいる。
その名は「泣き虫」。
こいつがボクの胸の中で泣くから、つられてボクも泣いちゃうの。

「泣き虫って、どうすればいなくなるかな」

お母さんにそう聞いたら、お母さんは優しく頭を撫でてくれた。

「泣き虫は、自然といなくなるよ」

いっぱい食べて、いっぱい勉強して、いっぱい遊んだら、自然といなくなるよ。
お母さんのその言葉を信じて、僕は毎日いっぱい食べて、いっぱい勉強して、いっぱい遊んだ。





「あんなに泣き虫だった子が、立派な警察官になったねぇ」

しわだらけになった手で、母が頭を撫でる。

「もう、一人で大丈夫だねぇ」
「まだ、駄目だ。駄目だよ」

病院のベッドの上で、小さくなった母の手を握った。長い間、姿を見かけなくなっていた泣き虫が、また僕の元に現れて。

目を閉じてしまった母にすがりついて、ボクはわんわんと泣いていた。
その他
公開:21/05/02 10:44

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