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「ここはバス停でしゅ」
早朝の穏やかな日光と少し肌に冷たい風。
突然声をかけられて見ると、母親と手をつないだ幼稚園児がアパートの壁からこちらを見ている。私はよくわからないまま笑顔を作って軽くお辞儀をする。
毎朝近所を散歩することにしている。ほとんどすべては失われているが、最後の綱を、その細い糸のような希望を震える手で握りしめている。老老介護の果て、夫に感じた終の感情は失望だった。娘夫婦は一緒に住もうと言ってくれている。私は断固拒否する。自分のため、家族のため。
洗濯物を干そうとして二階の窓をあけると、先の子供が見えた。あちら側を向いて手を降っている。桃色のバスがやってきた。幼稚園バス。
母親が笑顔を作っている。「行ってきましゅ!」元気な声。大きな帽子と大きすぎる服を纏った小さな命を乗せて、バスが発車する。ルーフが陽光を反射してきらめく。
思わず微笑んでいる。
「いってらっしゃい」
早朝の穏やかな日光と少し肌に冷たい風。
突然声をかけられて見ると、母親と手をつないだ幼稚園児がアパートの壁からこちらを見ている。私はよくわからないまま笑顔を作って軽くお辞儀をする。
毎朝近所を散歩することにしている。ほとんどすべては失われているが、最後の綱を、その細い糸のような希望を震える手で握りしめている。老老介護の果て、夫に感じた終の感情は失望だった。娘夫婦は一緒に住もうと言ってくれている。私は断固拒否する。自分のため、家族のため。
洗濯物を干そうとして二階の窓をあけると、先の子供が見えた。あちら側を向いて手を降っている。桃色のバスがやってきた。幼稚園バス。
母親が笑顔を作っている。「行ってきましゅ!」元気な声。大きな帽子と大きすぎる服を纏った小さな命を乗せて、バスが発車する。ルーフが陽光を反射してきらめく。
思わず微笑んでいる。
「いってらっしゃい」
その他
公開:21/05/05 07:00
更新:21/05/04 20:35
更新:21/05/04 20:35
さまようアラフォー主夫
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