もういいかい

公園で一番大きな木に顔を伏せていたぼくは顔を上げた。
「もういいかい？」
誰も答えるはずのない問いかけを口ずさむと、ぼくは歩き始めた。

探しながら考えた。かくれんぼで見つからないようにするにはどうするか？
子供が相手だから、大人ならみつからないんじゃないか。自分が大人ならどこに隠れるだろうって。

途中、ふと振り返るとすべり台の「階段じゃない方」に寝そべっているこどもがいる。
「こうきくんみいつけた」
こうきくんはアハハハと笑いながらすべり台で遊び始めた。子供の考えなんてそんなところだよね。

ぼくなら絶対に見つからない。大人になったぼくが隠れるならこの場所だ。
でも、もし大人になったぼくがそこに居たら、大人のぼくは恥ずかしいかもしれないからどうするかも決めていた。
ぼくは、最初にいた大きな木の前に戻ってきた。そして木に向かってつぶやいた。

「もういいかい？」

「…まあだだよ」