貴族について話そう

　西大陸国リンドレアンは、国王を有するピッツァリア家とその近縁者が統治しているが、それを揺るがしかねない勢力が貴族である。実力で富と力を得た彼らにとって、血筋と歴史の蓄積を権威と捉える王家は非常に不愉快な存在であった。それは王家も同様ではあったが、彼らが驚異となる理由は他にあった。
　爵位制である。
　王家が国に重要な貢献をした者に与える称号であり、それには名誉や誇りの証だけでなく、統治者となる権利も付与されている。
　勿論それは、王家が許可した区域という限定的なものとする筈であったが、その制限は付けられなかった。
　法務を担当する王族の中に、貴族と繋がる王政廃止論者がいたためである。公的にも支持を得ていたその王族の不祥事は隠匿されるが、そのためには無制限となった統治権も維持せざるを得なかった。こうして、あわよくば王家に代わり大陸全土の統治を狙う貴族と王族との権威闘争が始まったのである。