だから言ったのに

『貴方が落としたのはこの金の斧ですか？』
「そうです！」
『貴方は嘘吐きですね。斧は私が貰います』
去っていく女神を見て「だから言ったのに…」と彼女がため息を吐く。
「いいんだよ。これで妻を殺した凶器は絶対に見つからない。それに金の斧なんて持っていたら余計に怪しまれるだろ？」
俺の説明に浮気相手である彼女は納得する。
『貴方は正直者ですね。褒美に奥様を生き返らせてあげましょう』
泉に目を向けると女神が再び立っていた。
驚き目を見開いていると誰かに背中を押される。彼女と俺、泉へと突き落とされた。
『貴女が落としたのは最高の夫と最高の親友ですか？』
女神が誰かに問いかける。
「いいえ。私が突き落としたのは最低な元夫と最低な元親友です」
誰かは憎々しげに答える。
『貴女は正直者ですね。褒美に最高の二人をあげましょう』
妻と俺達にそっくりな二人が見守る中、本物の俺達は泉の底へと引きずり込まれた。