失恋で風呂で想う

私たち二人ははじめはこの湯船のように熱々だったのに。
水を差して私たちの熱を奪ったのはあの女だ。
あの女のせいで彼との関係はまるで髪質に合わないリンスをした髪の毛のようにギスギスとしたものになってしまったのだ。
涙が出るのは目に染みたシャンプーのせいか、いや…
石鹸で洗いすぎた手のようにカサカサになった心で湯に身を沈める。
復讐はダメだとかそういう陳腐な一般論はまさに焼け石に水。
私は怒りを通り超えてなんだか笑えてきた。
ふふっ、ふははっ、ふははははははは！
　⎯　今に見てろ
湯船がなにか言いたげにちゃぷんと鳴った。