サボテンの頬ずり

4
4

女優として第一線で活躍するIはSNSの類は一切やらなかった。
ミステリアスなイメージを保持する為、やらないように事務所から釘を刺されていたが、そもそも興味がなかった。
なので彼女に対する中傷発言は基本的には本人に届く事は無かった。ある例外を除いて。

着信したスマホの画面には姉Aの名前。
「もしもし。ちょっと大丈夫?今度のドラマの役ネットで散々叩かれてるから心配で。でも気にしちゃ駄目よ。私はいい演技だと思うわ」
「姉さん。私そんなの見てないから知らないの。教えてくれなくていいから」
しばらくしてまた着信があった。
「I。言い忘れてたけど、誰に何を言われてもクスリだけは駄目だからね。私は信じてるけど母さんが心配してるから」
「…分かったから、変な心配しないで」
「あと、M川Y美は新人だからってイビったりしちゃダ」
終話ボタンを押した。悪意なき無数の棘が心に残る。
その他
公開:21/04/28 10:20

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容