さっちゃん

姉貴には、幼い娘が一人いる。
さっちゃんと呼ばれて可愛がられている。
でも、さっちゃんはなぜか俺には全然なついてくれず、手をつないでいでも、むっつりしているだけだった。
ある時、俺はさっちゃんの前で、つるーんとずっこけてしまった。雨上がりだったからだ。
それを見たさっちゃんは大笑いしてくれた。
天使のような笑顔だった。
なるほど。さっちゃんはこういう笑いが好きなんだ。
それ以降、俺は度々さっちゃんを笑わせ、だんだんさっちゃんも俺になついてくれるようになった。
そんなある日、俺はカーペットの端を踏んづけて転び、そばの棚に頭を打ち付けてしまった。
助けを求めようにも、声が出ず、視界も徐々にブラックアウトしてきた。
軽い足音がする。さっちゃんだ。
助けて！！
しかし、俺の耳に入ってきたのはあの無邪気な笑い声。
これは天使の迎えか、それとも悪魔からの招待か。
確かめる間もなく、俺は意識を手放した。