だから言ったのに

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『幸せを分けて下さい。幸せを分けて下さい』
疫病神が道行く人々に声をかける。皆、疫病神を無視する。離れていく。当然だ。
でも、私はそんな疫病神に声をかけた。
「私の幸せで良ければ、どうぞ使って下さい」
『ありがとうございます…でも、いいんですか?』
「はい…私、実は不治の病でもうすぐ死んでしまうんです。今も病院から抜け出してきたんですよ」
私の言葉に疫病神は嬉しそうな顔をする。
『それはそれは。では、早速幸せを頂きましょう。いいですか、死とは人に平等に与えられる幸せなのです。今、貴方の死合わせを私が頂きました。貴方は死にません。生という不幸をこれからも味わってください』
疫病神はそう言うと私の前から消えた。私の不治の病とともに消えた。
それからの人生は、楽しいばかりではなかった。その度に疫病神の『だから言ったのに…』という声が聞こえる気がする。
だが、清濁併せ呑むからこそ人生は楽しいのだ。
公開:21/04/27 20:32

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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