明大前

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渋谷で映画を見終えた剛は、井の頭線で明大前駅へと向かった。何となく淡い期待を持ちながら。
そして一人、新宿で映画を見終えた優子は、京王線で明大前へ向っていた。
剛は明大前駅の男便所に駆け込んだ。急激な便意に襲われたのだ。2つの個室は満室だった。もう限界だった。剛は急遽多目的トイレに向かった。そこは先客がいた。もう限界と思ったその時だった。扉が開いた。優子がでてきた。彼はその女を一瞥し便座に駆け込んだ。事なきを得た。
しかし、あのばばぁ、女なら女便所で用を足せばいいのに。舌打ちしてトイレを出た時だった。
「剛くん?」、先程の女が立っていた。「私よ、田中優子。やだー、久しぶり。大学生の時以来じゃない?」そこにはクラスに3人しかいなかった女学生の一人、五十路のマドンナ優子が立っていた。
二人は大学のキャンパスへ向かった。
1カ月後。剛のもとに手紙が届いた。それは癌を患っていた優子の訃報であった。
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公開:21/05/04 05:55
更新:21/05/04 06:30

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