昭和残響伝

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ノミオは終電を逃さまいと焦っていた。ドン。
ノミオは歩きスマホの男とぶつかった。「すみません…」ノミオは言った。
「あんちゃんよ、ちょっと顔貸してくんねぇか。」男は言った。
落ちたスマホを拾い上げたその男の顔は、まさに成田三樹夫風だった。その顔を見たノミオは従うしかなかった。アイマスクをつけさせられた彼は、その男の腰に手を添え、後についていく他はなかった。

繁華街を右往左往歩くこと10分。視界のないノミオにはとても長く感じた。緊張のあまり、街の音が全く耳に入らない。どうしてこんな事になってしまったのだろう、ノミオは後悔していた。
雑居ビルだろうか、二人はエレベーターで昇り、狭い暗室へと入った。ノミオはふかふかなソファに座らさせられた。ノミオの頬に金属性の冷たい突起物が押し付けられた。そして男が言った。「一緒に歌ってくれねぇか。」次の瞬間だった。「上を向いて歩こう」のイントロが流れ出した。
その他
公開:21/04/30 05:55
更新:21/04/29 07:32

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