各駅停車

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僕は本が好きだ。
学生の頃から本が好きだった。授業の合間の短い時間も無駄にしなかった。しかし、社会人になってからは読む時間が減った。

仕事へは片道一時間近くかかっていた。途中で乗り換えが二つあるため、あまりゆっくりと本を読んではいられない。
ある日の帰り道。駅のホームで電車を待つと、各駅停車の電車がやってきた。
準急に乗るために横に避けようとした時だった。ふと電車の中を見ると、まばらな席には、本を読んでいる人が座っている。
僕は誘われるように電車の中に入った。一番近い席に座り、常備していた本を開く。
次の駅で二つ隣に一人が座る。その次の駅で、その人は降りた。さらに次の駅では正面の席の人が降りて、そこに違う人が座った。乗車している人数は変わらずとも、人は変わっていく。それ以降は不思議と気にならなかった。急行列車の通過待ちはいつあったのか。

明日からも各駅停車に乗ろう。
そう心に誓った。
その他
公開:21/04/26 01:11

Y.S

社会人になってから小説のアイデアが湧かなくなったので、リハビリがてらショートショートを書いていこうと思います。

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