雨の日には傘をさす

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最後に傘をさしたのは、いつだったのだろうか。
高校の卒業式の日だろうか。仲の良かった友人と、誰が雨男か話をしたのを覚えている。
いや、大学二年の梅雨の時期か。その時に付き合っていた彼女と、初デートに出掛けた日。彼女を濡らさないようにと、自分の右肩を犠牲にしていた。
いずれにしろ、もう十年以上も前のことだ。それでも、未だに覚えている。

車は、俺に傘の存在を忘れさせた。
駐車場と家との間は、傘をさすまでの距離ではない。そもそも、自宅で仕事をしていたために外出が少ない。買い物に行くときも、スーパーの地下駐車場が天気を忘れさせた。
新しい習慣は、時に古い習慣を忘れさせる。

「雨の日には傘をさす」

次は忘れないようにしよう。
風邪を引いて寝込みながら、布団の中で考えるのであった。
その他
公開:21/04/26 00:44

Y.S

社会人になってから小説のアイデアが湧かなくなったので、リハビリがてらショートショートを書いていこうと思います。

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