Shellwhale

　新人海洋学者の僕は、初めて参加した研究グループの遠洋調査で新種の鯨を発見した。比較的浅い海に棲むその鯨の最大の特徴は、下半身が巻貝のような殻で覆われている事。巨大な蝸牛を思わせるその鯨はShellwhaleと名付けられ、学会はその話題で持ちきりになった。発見者の僕は新人でありながらShellwhale研究の中心メンバーに選ばれ、高名な学者達と交流する中で僕自身の名も知られるようになってきた。
　Shellwhaleの研究の中で、彼らの殻は地球上で最も硬い事が分かった。銃弾は愚か、ミサイルの直撃にも耐える耐久性を持つ。そうなると新たな謎が生まれる。彼らの棲む海は水圧が低いのに、深海生物よりも遥かに硬い殻を持つ。そして彼らの天敵は発見されていない。彼らは何故、ここまで硬い殻を得たのか。この海には、僕らの知らない強大な生物や脅威が潜んでいるのだろうか。海洋学者としての僕の道は始まったばかりだ。