Ⅰ．051 ぺルビエの攻防～頂戴～

　展示ケースは散らばる瓦礫の中、見事なまでに直立でそこに着地していた。それだけ先の爆破が正確だったということだが、それを称賛している場合ではない。
　ケース内を確かめる主人。
　案の定御宝はなく、手に取ったのは指先で隠れる程の小さな金属。これがタグと呼ばれる発信機だ。ケースごと御宝を移動させたのはこれのためか。
　主人は改めて保管庫内を見渡す。
　大の大人が身を隠している様子も気配もない。入口はずっとわたしが陣取っている。では奴はどこから逃げたか？答えはひとつだ。
「ゲホッゲホッ。ほら、危ないから近づくな！写真は後にしろ！」
　上からデニさんが咳き込みながら、野次馬を追い払う声が聞こえる。上にも爆発の影響が出ているのか？
「…デニさん！」
　天井の穴に向かって主人が叫ぶ。
「何だ？セディか？」
「審門へ急げ！奴はもうそこだ！」
「わん！」
　主人とわたしは再び駆け出した。
　間に合うか！？