もじおくん

もじおくんはイモムシみたいにくねくねしている。「あ」というとくねくねして、「い」というともじもじして、「お」というとべちょべちょしている。
そんなもじおくんのささやかな楽しみは、そこら中の壁をよじ登ることだ。もじおくんは冷たい壁に身体を密着させることが大好きで、ひんやり感のために張り付くように登る。上に登ることに理由はない。ある程度登ったら満足してまた降りてくる。
今日ももじおくんは壁の前でくねくねしています。言い忘れていましたが、これはもじおくんの求愛ダンスでもあります。もじおくんは壁のことが好きすぎて壁に恋をしてしまったのでした。
もじおくんは童貞男子です。いつも鏡の中の自分の唇めがけてぶちゅーとタコのように口をすぼめてキスの練習をしています。
もじおくんは今日生まれて初めて壁にキスをしてみました。壁は冷たいし硬い。やっぱりいつか女の子に抱きついて柔らかな唇にキスしたいと思うのでした。