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ピンクの花を1輪。
口にくわえて、ちゅうっと吸った。

『まきちゃん、甘いよ』
『けんくん、ツツジすきだよね』

まきちゃんも大きめの花を選んでひと吸い。

『花が大きいともっと甘いと思ったのにな 』

いたずらっぽく笑うまきちゃんと、楽しくてしょうがない僕。
甘いのは一瞬。沢山のツツジを摘んで歩いた。
僕らの跡には鮮やかなピンクの足跡が続いている筈だ。



ピンク色の線の入ったフィルター。
口にくわえて、火をつけた。

『まきちゃん、もう無理だよ』
『けんくん、私の事、もう好きじゃないの?』

まきちゃんのタバコは、何だか不思議な香りがした。
僕から奪い取って、彼女は灰皿にそれを押し付けた。

『ずっと一緒って思ったのに』

泣き始めるまきちゃんと、無表情の僕。
ツツジを吸っていた頃には戻れない。
嗚咽が夜に響く度に離れたくなっていく。
好きでなくなる前に、今夜、君とさよならしよう。
恋愛
公開:21/04/26 22:33
更新:21/04/26 22:36

雨森れに( 東京 )

色合いの綺麗な物語を紡ぎたい。
シーンごと切り取られた刹那。
不思議、恋愛、ファンタジー、怪談、純猥談などをチラホラと。
中身はお酒が好きなアグレッシブ。

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