私は何も言えなかった

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科挙の試験のため、引きこもりの生活を送って数年。
そろそろ外の空気を吸いたくなって出てみたが、いつの間にか
飢饉にみまわれていたらしい。
活気があった市場も廃墟と化し、いたるところに餓死者の死体が転がっていて
歩くのもおぼつかない。

そんななか、物乞いと思しき二人の女性の遺体がお互い抱き合って倒れているのに
目が止まった。
おそらく母と娘で生前は仲が良かったのであろう。
かっては美しかったであろう姿ももはや見る影もなく、蝿がたかるのに任せている姿は見るに耐えない。
よく見ると娘の遺体には首から札が下がっており何か書かれているようだった。

「娘、売ります。銅貨10枚」

私は何も言えず、ただその場を離れるしかなかった。
その他
公開:21/04/26 21:07

ばめどー

ぼちぼちやっていこうと思います。
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