帰省
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きみ、が、すき、だ
少し突き出した唇から出てきた文字列は空気に触れた途端砕けて零れ落ちていく。仰向けに寝転んだ身体の一番上から肩に、胸に、足元に転がっていく文字たちは白く波打つシーツの中に吸い込まれていった。
重たい目蓋を少しだけ開いて波の中を探してみたが、結局その六文字は見つけられなかった。
そう、たったの六文字なのに。
「ねえもう昼だよ、起きてよ」
「ん、うるせ、てかなに」
いつの間にか眠ってしまっていたのだろう、時計を見ると短い針が三つ、進んでいた。閉めていたカーテンは開けられていて眩しい光が瞼の裏からでも分かるくらいに突き刺さってくる。
「この服どう?似合ってる?」
「…まあまあ」
「ちゃんと見てよ!せっかく久しぶりにお兄さんに会うんだから」
「…俺は好きな方だけど」
「あんたのじゃなくてお兄さんの好みを知りたいの」
そんなの知る訳ない。俺が好きなのは、お前だってのに。
少し突き出した唇から出てきた文字列は空気に触れた途端砕けて零れ落ちていく。仰向けに寝転んだ身体の一番上から肩に、胸に、足元に転がっていく文字たちは白く波打つシーツの中に吸い込まれていった。
重たい目蓋を少しだけ開いて波の中を探してみたが、結局その六文字は見つけられなかった。
そう、たったの六文字なのに。
「ねえもう昼だよ、起きてよ」
「ん、うるせ、てかなに」
いつの間にか眠ってしまっていたのだろう、時計を見ると短い針が三つ、進んでいた。閉めていたカーテンは開けられていて眩しい光が瞼の裏からでも分かるくらいに突き刺さってくる。
「この服どう?似合ってる?」
「…まあまあ」
「ちゃんと見てよ!せっかく久しぶりにお兄さんに会うんだから」
「…俺は好きな方だけど」
「あんたのじゃなくてお兄さんの好みを知りたいの」
そんなの知る訳ない。俺が好きなのは、お前だってのに。
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公開:21/04/23 11:30
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