021.空泳

4
4

 空を魚が泳ぐことがある。
 大きな鯨が屋根の上すれすれを通ることもあれば、小振りなジンベエザメが路地の隙間を縫うように漂っていることもある。
 特にそれは、ここ東大陸でよく見られている。事実今、私たちの頭上を巨大なエイが羽ばたき、通りに影を生んでいた。
「おぅ…」
 横で爬虫亜種の女性が、感嘆の声を漏らしていた。
「良かったですね。観ることができて」
 エイを見送った後に、私は改めて声をかけた。
「ええ。遥々西大陸から来た甲斐がありました。ありがとうございます」
「私は何もしてないですよ。何となくそう思っただけで」
 妖霊種の私は、彼らの来訪を感じることができる。ちなみに神社の巫女として働いているが、神を信じているかというとそうでもない。
「その通りになったじゃないですか。神社はお近くなんですか?是非お参りさせてください」
「いいですよ」
 こういう出会いを味わえるのが、主な志望動機だ。
ファンタジー
公開:21/04/25 09:36
更新:21/04/25 19:47
ファンタジー 巫女

Arujino( 東京都練馬区 )

まずは、こんにちは。

練馬区で活動中の、趣味の絵描きです。

小説・脚本なども執筆してます。

【番号なし】 用語・設定解説

【Ⅰ】 連載作品『WonDer BroS』 探偵と怪盗の対決が娯楽化した世界での物語。

【Ⅱ】 短編連作『Story Of Dri(P)Party』

【Ⅲ】 連載作品『根源悪の牧場』 戦争による差別と弾圧に支配された世界での物語。

【Ⅳ】 連載作品『ドライワンダーに遣う』

【001~】 短篇集『short TaleS』
 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容