腹から出す。

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「いたいいたいいたいいたいいたいむりむりむり」
「腹筋凄いですね~! 何か運動やられてました?」
医師が看護師と一緒に驚いていた。助産師は私の手を握り微笑んだ。
「え? バレーボールを少しーーいたいいたいいたい」
「バレーボール! だからかあ」
出しにくいって? おかしい。背中からあれだけ麻酔を入れたのにこんなに痛いなんて。早く出してくれー! いたいいたいそれ頭? 足、出る?
「はい! 可愛い女の子ですよ~」
胸にもちっと生まれたての赤子を乗せられた。
「い、生きてる!」
感動もお預け。お腹からまだまだ出すものが有るらしい。
いたいいたいいたい押してる! 出してる! 早くすっきり全部出してくれー! もうどうにでもしてくれ。

「ねっ、だから麻酔をしてもこうなんだから、狼さん、耐えられるわけがないのよ」
娘がドン引きでこちらを見ていた。私はそっと赤ずきんの絵本を閉じた。
ファンタジー
公開:21/04/25 00:13
赤ずきん 可哀想な狼 帝王切開 個人差があります

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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