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私は鳥になった。青い空に羽を広げ高く翔ぶのだ。
時折雲間からのぞく太陽が光のカーテンを穏やかに下ろすのが美しく、神聖で、私はすぐにそれを気に入った。
でも、何より鮮烈に私の頭にこびりついているのは。
ぴかり。温かな光を反射する煌めき。私の瞳を貫く。危険すら覚えているのに同時にひどく惹かれているのだ。
私は体を大きく傾け、輝きにくちばしを向け急降下した。女の指に灯ったそれを軽くつつくといとも容易く奪うことができた。
女の隣に立っていた男が恐怖で固まる女の代わりに悲鳴を上げる。
そこで気がついた。私は彼をよく知っている。
あの女の指から抜け落ちた輪っか。サイズの合っていない指輪。そりゃそうだ。あの指輪は彼女のものではなかった。私があの煌めきに惹かれたのは、私がカラスになったからだろうか。私はきっと鳥にならなくとも同じことをした。人間って馬鹿だ。思考の電源を落として、私は指輪を飲み込んだ。
ファンタジー
公開:21/04/24 13:46

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