虹始見

高台に登って街を見渡す。
随分と高い建物が増えた。
平常時には、エレベーターを待つ羽目に。
非常時には、停電で階段を登る羽目になるというのに。
バベルの塔のようにならないといいけど。
ほら、雷の音だ。
しかし、この程度ならすぐに止む。
一時凌ぎに雨宿り。
美術館に足を向けた。
なんたら皇女のコレクションというのが特別展示らしい。
日用品から、ドレスや貴金属まで。
皇女のコレクションじゃなくて、皇女の使用物を並べているだけじゃないか。
そりゃあ、ドレスはレースてんこ盛りで、貴金属は派手だったけど、綺麗と思えば綺麗としか言いようがない。
入場料を払ってまで雨宿りする必要があるか。
一周して、見終わってしまった。
雨は止んだろうか。
窓に当たる水滴はない。
なんたら皇女のポストカードを、一枚買って外に出た。
高台から街を見渡す。
ああ、変わらないものがあった。
綺麗だ。
空にかかった色づく橋。