きぐるみ

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「今年は庭の桜が咲くのを見れなかったねぇ…」と自宅療養になった妻が呟いた。
妻の病気が良くなった事は嬉しい。だが妻が窓の外の桜を見つめては溜息を吐く姿を見て、儂はどうにも居た堪れなくなった。
どうにか妻に満開の桜を見せてやれないだろうか…慣れない手つきですまふぉをいじる。
『それならシバイザクラがお勧めですよ』
シバイザクラとは芝桜の一種でソメイヨシノによく似た花が咲くらしい。それを桜の木に這わせる事で疑似的ではあるが桜を楽しむ事が出来る…と。妻の為だ。慣れない手つきでねっとつーはんとやらに依頼した。
届いたシバイザクラを妻が寝ている間に庭の木に設置していく。翌朝きっと驚くぞ。
一本だけじゃ寂しいな。全部の木にシバイザクラを這わせてやろう。
翌朝、儂は妻に「桜が満開じゃ!」と芝居がかった口調で言った。
妻は全体がピンク色に染まった庭の木々を見て「二つの意味で”きぐるみ”ね」と笑ってくれた。
公開:21/04/20 20:58
ぬいぐるみ的な意味の着ぐるみ 町ぐるみ的な意味の木ぐるみ

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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