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散歩中、頭上でさえずりを聞いた気がして、僕は足を止めました。
おぼろ雲に霞む空を背景に、枝を広げた樹に小鳥が止まっています。百羽近くもいたでしょうか、賑やかで仲が良さそうで、僕も楽しくなりました。
「お兄ちゃん何見てるの?」
同じく散歩中なのか、通りかかった子供が僕に聞きました。
「あの樹に鳥が来てるんです」
指さした先を見て、その子は首を傾げました。
「木の実じゃないの、あれ?」
「ほら、お邪魔しちゃダメでしょう。……ごめんなさいねこの子ったら」
お母さんでしょうか、女の人が困った顔で僕に笑い、子供の手を引いて行きました。
「多分、桐だと思うぜ。俺も詳しくないけど」
前を歩いていた友人が、追い付いた僕に言いました。
「……でも、声を聞いたんです」
「そっか。……そう言や、聞こえる気すんな」
二人で見上げた鳥は、あの子の言う通り木の実でした。
つんと尖った実の先が、ピィと一声鳴きました。
おぼろ雲に霞む空を背景に、枝を広げた樹に小鳥が止まっています。百羽近くもいたでしょうか、賑やかで仲が良さそうで、僕も楽しくなりました。
「お兄ちゃん何見てるの?」
同じく散歩中なのか、通りかかった子供が僕に聞きました。
「あの樹に鳥が来てるんです」
指さした先を見て、その子は首を傾げました。
「木の実じゃないの、あれ?」
「ほら、お邪魔しちゃダメでしょう。……ごめんなさいねこの子ったら」
お母さんでしょうか、女の人が困った顔で僕に笑い、子供の手を引いて行きました。
「多分、桐だと思うぜ。俺も詳しくないけど」
前を歩いていた友人が、追い付いた僕に言いました。
「……でも、声を聞いたんです」
「そっか。……そう言や、聞こえる気すんな」
二人で見上げた鳥は、あの子の言う通り木の実でした。
つんと尖った実の先が、ピィと一声鳴きました。
ファンタジー
公開:21/04/20 17:47
散歩道で見た
シーズン4-④
空目のさえずり
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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