鳥を視た人

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散歩中、頭上でさえずりを聞いた気がして、僕は足を止めました。
おぼろ雲に霞む空を背景に、枝を広げた樹に小鳥が止まっています。百羽近くもいたでしょうか、賑やかで仲が良さそうで、僕も楽しくなりました。
「お兄ちゃん何見てるの?」
同じく散歩中なのか、通りかかった子供が僕に聞きました。
「あの樹に鳥が来てるんです」
指さした先を見て、その子は首を傾げました。
「木の実じゃないの、あれ?」
「ほら、お邪魔しちゃダメでしょう。……ごめんなさいねこの子ったら」
お母さんでしょうか、女の人が困った顔で僕に笑い、子供の手を引いて行きました。

「多分、桐だと思うぜ。俺も詳しくないけど」
前を歩いていた友人が、追い付いた僕に言いました。
「……でも、声を聞いたんです」
「そっか。……そう言や、聞こえる気すんな」
二人で見上げた鳥は、あの子の言う通り木の実でした。
つんと尖った実の先が、ピィと一声鳴きました。
ファンタジー
公開:21/04/20 17:47
散歩道で見た シーズン4-④ 空目のさえずり

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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