虹彩光幕(プリズムシャッター)

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写真部部室に古くからある錆びて役立たずのオンボロカメラには、僕だけが知る不思議な特性がある。そこを覗くと見えるのだ。クラスメイトたちの素顔。他人の心の色が。

クラスの人気者の心は腐った果実のよう。

猜疑心の紫
妬みの鈍色
裏切りの赤

皆、口では友情、仲間と曰う。誰の心にもそんな色などありはしないのに。

底なしの沼にずるずると引きづり込まれるような恐ろしさ

僕には耐えられなかった。
知らなければよかった。

君を見つけるまでは。

雷嵐後に虹が空を切り裂くように、プリズムを纏う君の色にどんな名前をつけても陳腐になるだろう。

鎮座する名もない救いの色彩。

柔肌に汗が伝う。
シャッターを切る。 
錆びついて降りない。

髪が靡く。
シャッターは切れない。

目が合う。
シャッターは切れない。

唇が僕の名をなぞる。
眩さにファインダーから目を外す。
祈るようにシャッターを切る。
青春
公開:21/04/20 17:11
更新:21/04/20 17:25
壊れたカメラシリーズ 心の色

空津 歩( 東京在住 )

空津 歩です。

ずいぶんお留守にしてました。

ひさびさに描いていきたいです!


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