ロバさんのお店

高層ビルの陰にロバさんのお店がある。塾帰りにはいつも寄り道する。ロバさんはお菓子やパンや雑貨を売っている。ぼくが好きなのは買い物よりもロバさんの話だ。ロバさんの昔話。ほんの数十年前らしいが。まだ人間が一番偉いと思っていた頃、ロボットは忠実な奴隷だったけれど、AIが発達して人間を凌駕した。AIが人間を支配するのに時間はかからなかった。互いにコミュニケーションをとったAIは人間の行動を管理し人間社会を支配した。労働は旧来型ロボットが行い、人間は何もせずに生活した。でも昔の汗を流した生活が人間らしかったとロバさんは言う。店では米で作った菓子やパンを売る。今は化学食糧しかないが昔は米が主食だったとか。
そしてAIはDNA改良に手をつけた。人間と動物の組み合わせが行われた。いろんな動物の特徴を活かした新種の生物が現れた。街では沢山の新生物が仕事をする。ロバさんもそうして造られたロバ人間なのだけど。