座布団一枚

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「座布団一枚!」
道を歩いていると、男にそういわれた。
「座布団一枚!」
変な男だ。
「座布団一枚!」
気でも狂っているのだろうか。
「座布団一枚!」
まあ、こういう輩は関わらないほうが無難だ。
「あなたは実に平凡な人生を送っている。座布団一枚!」
男の前を通り過ぎると、そういわれた。
特に気にも留めなかった。

そして、私はなんてことない平凡な一生を終えた。
天国への階段は、座布団でできていた。
「座布団一枚!」
遠くからあの男の声が聴こえてくる。
「平凡な人生お疲れさまでした。座布団一枚!」
一段、いや一枚ずつ階段を上っていく。
褒められているかどうかはわからないが、こういってもらって、悪い気はしない。


「座布団一枚!」
道を歩いている男に、私はそういった。
「座布団一枚!」
平凡な人生もまあ悪くないよ、と。
公開:21/04/21 16:04

ふじのん

大学生

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