死の砂時計

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「これはあなたの寿命です」と男が言った。
彼の手には砂時計が握られている。
「あと1時間で砂は落ちきり、あなたは死にます」
私は死の砂時計を受け取った。
たった30年ほどの人生だが、思い返せば後悔の連続だ。
あの時別の道を選んでいれば、あの時あの子と仲良くしていれば、あの時真面目に取り組んでいれば。
私はもっとマシな人生を歩んでいることだろう。
「それでは最後の時間を楽しんでください」
男は静かに去っていった。

1時間はあっという間に過ぎた。
彼女は自宅のソファーで眠るように命を落とした。

彼女が命を落として数分後。
何者かが砂時計を持ち上げ逆さにすると再び砂が落ち始めた。
さらさらさらと誰にも聞こえない音を立てて。

次の瞬間、私は目を覚ましてしまった。
砂時計はデタラメだったのかと落胆する。
と同時に、私は自然と叫んでいた。
「オギャア。オギャア」
公開:21/08/01 21:59

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

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