奇跡を反射する光

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その夏、その高校の快進撃には目を見張るものがあった。無名野球部の大躍進を誰が予想しただろう。立役者は突如として現れた一年生投手だ。

怪物と呼ばれた彼の投球は、素人の私の目から見ても凄まじかった。 

テレビの前で起こる奇跡を目の当たりにした私は心を震わせた。

他界した母のため、男手ひとつで育ててくれた父のため、甲子園を目指す姿にエールを送る。

彼が見せた奇跡、震えた感動、与えてくれた勇気。

彼らが優勝したら手術を受けよう。

病室のベッドで祈りはしなかった。彼らの勝利を信じて疑わなかったからだ。

だが、彼らは負けた。

その時、私は2つのことを決意した。

手術を受けること。

そして、真実を突き止めること。

投球の調子が崩れた9回裏、エースの目に反射した光と一瞬映った客席から走り去る黒い人影。

後に「疑惑の光」と「野球帽の男」と呼ばれたそれを私はたしかに見たのだから。
その他
公開:21/08/01 21:58
更新:21/08/01 22:37
あの夏の記憶②

空津 歩( 東京在住 )

空津 歩です。

ずいぶんお留守にしてました。

ひさびさに描いていきたいです!


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