消えゆく日記

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先輩の部屋の棚に並んだ膨大な量の日記が気になった私は、先輩が席を外した隙に、許可も無くそれを読んでしまった。
最近のものはただの日常の記録だったが、何気無く手にした古い日記は全て白紙だった。不思議に思っていると先輩が戻り、日記の盗み見が見つかった。
「俺、日記憑きだぞ。お前、大丈夫なのか?」
日記を読んだ私を咎めるでもなく、先輩は私の心配をしていた。

先輩に促されるまま、私は日記をつけ始めた。先輩の日記のように過去のものは消え、書いた内容は記憶からも消えるらしく、思い出せない。日記をつけるのは苦ではなかったが、気になる事を先輩が言っていた。
「日記を書き忘れて、お前が喰われるんじゃねぇぞ」
私はその事を日記に書いた。

数日後の深夜。
愚かにも日記をつける大事さを喰わせた私の枕元に。
髪の長い女性のような姿で、不自然に首を傾げながら、血走った大きな瞳で、じっと私を見下ろす、ヤツがいた。
ホラー
公開:21/08/04 18:00

お弁当係

2021年7月、投稿開始。
小説を読むのが好きですが、書くのも楽しそうで始めてみました。
読んでいただければ幸いです。
 

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