ガラスの小瓶

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「ほ、ほ、ほ~たるこい。こっちのみ~ずはあ~まいぞ~」
歌いながらガラスの小瓶の蓋を開ける。川辺から光が溢れ出した。
飛んできた蛍は私の手元、小瓶へと殺到する。やっぱりこの赤い水は特別甘いらしい。
私は小瓶を地面に置くとトランクの留め金を外し、中のものを地面に転がす。それにも蛍は群がった。
ほっと息を吐く。歌の通りだ。蛍は甘い水に寄ってくる。
さっき私が転がしたもの…甘い汁ばかりを啜って生きてきたクズ男の死体に蛍が群がる。
その血は蛍の成虫が啜るだろう。
その肉は雑食のホタルの幼虫が喰い漁るだろう。
私は空になったガラスの小瓶を拾い上げる。中身は空だが鉄のニオイが鼻を突いた。
蓋を閉め、瓶を持ち帰る。
蛍は私に寄ってこない。当然だ。苦汁ばかり舐めて生きてきた私に蛍は寄り付かない。
さて…次に狙うはあの男。
その血も蛍が寄ってくるものならいいな…
ホラー
公開:21/07/30 20:37

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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