クーポン券

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その飲食店は、クーポン券をくれる。「100%割引(日替わり定食に限る)」と書いてある。次の日、日替わり定食を頼む。会計時、クーポン券を出す。店員は、笑顔で「じゃあ、タダですね。」と、ニッコリ笑う。そして、「これ、明日から使えるクーポン券です。」と言って、また、渡される。次の日も、その次の日も、クーポン券を渡される。100%割引の、あのクーポン券を。どうやって、利益をあげているのだろう?疑問に思いつつも毎日通った。雨の日も風の日も必ず通った。何年通ったかも、わからないぐらい通ったある日。その日は、クーポン券をくれなかった。「なんで?なんで、今日はくれないんだ。オレは毎日通ってるんだ。いつもクーポン券をくれるじゃないか!どうしてだ?」店員は少し悲しそうな顔をして「残念ですが、この店は今日でおしまいです。そして、あなたの寿命も」男は天を仰いだ。そして、「今まで、ありがとうね」と、小さく呟いた。
ファンタジー
公開:21/08/01 09:42

ソフトサラダ( 埼玉 )

時折、頭をかすめる妄想のカケラを集めて、少しずつ短いお話を書いています。コメントは励みになります。

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