トンボソード改

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当てのない毎日を過ごしていると思う。
今を精一杯生きている人間は、僕の暮らしぶりをどう思うのだろう。

巨大なトンボの死骸を見つけた。
なんていうかセントバーナードくらい大きい。玄関を開けたらそれはあった。

僕はそれを自分の部屋に持ち帰って、
尻尾を切り離して、切った部分にガムテープをぐるぐる巻いて剣を作った。

その剣を持つとトンボみたいに素早くなって薄い羽も生えてくる……気がした。
すごく早く動ける……気がする。
ビュンビュン飛べる……気がする。

僕の気分は高揚していた。トンボソードをあっちにこっちに振り回した。

低いような高いような笑い声が聞こえてくる。
あのおばちゃんがきてる。声のでかい、デリカシーのないおばちゃん。

会いたくないな。会いなくないな。

僕はトンボソードをかんぬきにした。耳に手を当てておばさんの声が聞こえないようにして、静かに知られないように縮こまる。
ファンタジー
公開:21/08/01 02:46

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