父さんの鞄

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今日は仕事が早く終わった。

見慣れた背中。スリムな体型だけれど背筋が伸びた凛々しい姿。父さんのうしろ姿を見つけた。
「父さん」
「ああ」
「鞄持つよ」
「ん?そうか?」
ひょいと掴んだつもりが、革製の父さんの鞄はずっしりと重かった。

「ちょっと寄ってくか?」
嬉しそうな父さんと初めて居酒屋へ立ち寄った。
「お疲れさま。うまいなー。こうして飲むの初めてだな」
「うん。そうだね」
仕事は楽しいか?とかそんな話をして。

今、僕は実家から通勤しているのだけれど、父さんに話してみた。
「父さん。あのさ。春から僕。一人暮らししようと思うんだ」
「うん?そうか。母さん寂しがるけど。喜ぶと思うぞ」
「うん」
「いいんじゃないか?」
「ありがとう」

「父さん。この鞄こんなに重いんだね」
「何言ってんだ若いもんが」


「ただいま」
父さんと声がハモった。

「おかえり。ふふ」

春までまだ少しある。
その他
公開:21/07/28 20:46
更新:21/07/28 20:50
父親 かばん カバン 一人暮らし 親子 実家

前虎( https://mobile.twitter.com/mae10ra )

はじめまして。
前虎と申します。
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