倒立人の涙

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国道7号線。新潟から青森に至るその道を2匹のアオダイショウが抜きつ抜かれつ北上してゆく。やがて2匹はそれぞれパートナーを見つけるがその関係はひと夏だけのものでまた北上をつづける。不意に2匹は由利本荘で結ばれるが、それは子を宿すとか巣を作るとかではなく歌うようなもの。おなかの鱗が223枚なのがドロシーで、235枚のほうがナンシー。ドロシーは右側への蛇行を好みナンシーは左側を好む。ある程度進むと2匹は同じタイミングで修正を図り交差しては離れる。それはまるで「なんでだろー」で一世を風靡した2人組のように。
リビングでそんなドキュメンタリーを観ているとなんだか嬉しくてあふれる涙が頭皮をつたう。涙が頭皮をつたうのは私が倒立して暮らす倒立人だからで、頭頂部から滴る涙は頭部の鬱血からかコーラルピンク。そんな私の涙をウミガメの産卵みたいに撮影するクルーは神秘のきらめきだと喜ぶ。
これで出てってくれるよね。
公開:21/07/30 12:35

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