ガラスの小瓶

0
2

母は体が弱く、ずっと入院している。家より病院での生活の方が長いんじゃないかって思うくらいだ。
「いつもありがとうね」
母に頼まれていた着替えや日用雑貨、あと空のガラス小瓶を渡す。
「貴方も飲んでみる?」と言われ首を横に振る。母が差し出すは水の入ったガラス小瓶。今の私が飲めばそれはきっととてつもなくマズいはずだ。
「残念」と言って母が水を口にする。凄くマズそうな顔をしていたのでホッとした。
母が先程飲んだのは三途の川の水。その水を飲んでおいしいと感じるは水が合う証拠。つまり、死に近い状態であるらしい。
逆にマズければ水が合わない証拠。つまり、死と遠い状況だと言う。
体の弱いは母何度も臨死体験し、その度に三途の川の水を汲んで帰ってくる。
この水の噂を聞き、今日も母の病室には何人もの患者さんが訪れる。
特に難しい手術を受ける患者さんに大好評のようだ。
病院で水商売する母は見た目と違って逞しい。
公開:21/07/29 20:24

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容