感情銀行

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五十日の銀行は混雑する。
衝動的に出てきたがそういえば月末だった事に気づき、あそこも混雑していないか気になった。
自動ドアを潜ると冷房の冷気と警備員の挨拶に迎えられた。
2台あるAEMは比較的空いていた。
一般的にATMと呼ばれるがこの感情銀行ではAEMと呼ぶ。
最後尾に並ぶと前にはご婦人と青年の2人。
1つ空き婦人が向かう。操作後、婦人はその場で泣き崩れた。
おそらく、嫁いだ娘から振り込まれた『哀』を肩代わりしたんだなと予想した。
直ぐに係が駆けつけ椅子へと誘った。

いつの間にか自分の番がきていた。
カードを入れ液晶画面の『預け入れ』を押す。
喜怒哀楽のボタンの『怒』を選んだ。
喜怒哀楽以外にある『その他』がいつも気になる。いつ使うボタンだろうか。
「すみません。少しよろしいですか」
警備員が隣で操作していた青年に声を掛けた。

「多量の殺意を引き出すお客様にはお声を掛けております」
SF
公開:21/07/29 13:57
更新:21/07/29 19:04

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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