Ⅰ.063 ペルビエの攻防~置去~ 

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「こんにちは」
 先に口を開いたのは、少年だった。
 蒼猫の尻尾を茫然と見つめていた主人はようやく我に返り、少年に向き直る。
「こんにちは。探偵のセディとニールだ」
「わん」
 姿勢を正し、会釈をする主人とわたし。
「突然の訪問に加え、先に挨拶を言わせてしまった事、お許し願いたい」
 主人は少年が貴族の出であることは、見抜いていたようだ。
「構わないよ。今の僕は貴族じゃないから」
 弱々しい声だが、どこか品を感じる語り口だ。
「猫さんなら、さっきまでそこに座ってたよ。捕まえないの?」
 という少年の質問が来たところで、わたしは主人にもう追撃の意思がない事に気づいた。僅かな別離を経て、彼は完全に覇気を失っていたのだ。
「…それはどうしたの?」
 主人は小さなテーブルを指し、少年に尋ねた。
「猫の忘れ物」
 そこに乗っていたのは、まぎれもなく我々が蒼猫と共に追い求めていた黄石の蜂だった。
ファンタジー
公開:21/07/26 21:16
更新:22/08/30 01:47
ファンタジー 連載 怪盗 探偵

Arujino( 東京都練馬区 )

まずは、こんにちは。

練馬区で活動中の、趣味の絵描きです。

小説・脚本なども執筆してます。

【番号なし】 用語・設定解説

【Ⅰ】 連載作品『WonDer BroS』 探偵と怪盗の対決が娯楽化した世界での物語。

【Ⅱ】 短編連作『Story Of Dri(P)Party』

【Ⅲ】 連載作品『根源悪の牧場』 戦争による差別と弾圧に支配された世界での物語。

【Ⅳ】 連載作品『ドライワンダーに遣う』

【001~】 短篇集『short TaleS』
 

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