街の精神科

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時代は進歩し、AIが医者に取って代わるようになると診察や処方はATMのような機械1つで済むようになり、その気軽さは患者の数を増やし、的確な診断で病は悪化するより前に防がれ、精神科のネガティブなイメージは消えていた。人々が足を運ぶ機会が増えたことで健康な者が殆どとなり、機械が深刻な診断を下すことは稀だ。
「お大事に。」
診察の結果、問題ないと判断されると響くその機械音声で院内は溢れ、今日も淡々と時間が過ぎた。
「異常があります。治療が必要です。」
滅多に聞かれぬが稀に耳にする機械音声に患者の何割かは驚いた様子だが、すぐに各々の世界に戻っていった。当の患者は困惑し、走り出したかと思うとそのままどこかへ消えてしまった。機械は自動で通報すると、その患者は捕まり直ちに閉鎖病棟へ収監された。AIの診断は完璧だ。それを無視した者は世界から隔絶される事になる。こうしてまた、世界は平穏に包まれた。
SF
公開:21/07/27 18:57

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