嘘つきの国

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嘘には価値がある。
小学校から嘘を習い始め、中学に上がる頃には自然に嘘だけで会話できるようになる。
嘘が上手い者ほど出世し、歴代の偉人の嘘が教科書に載る。
そんな世界で俺は全く嘘をつけない無能だった。
最初はなんとか嘘をつけるようになろうと、周りの人の嘘を真似て繰り返したりしていたが、すぐに本当のことを言ってしまうので馬鹿にされ嫌われた。
やがてグレた俺はわざと本当のことや当たり前のことを言って人を傷つけるようになった。世界への疑問を声高に触れ回り、苛立ちや負の感情を文字に起こしてばら蒔いた。
俺の行動は大いに問題とされ、何度も警察に捕まった。
ついには世界から追放されることになり、
異境の地へ飛ばされた。
気づくと、異境の地の住人に取り囲まれていた。
俺は捨て鉢な気持ちで、自分が何者でこれまでどんな罪を犯してきたかを正直に話した。
しかし、そこには俺を咎める者も馬鹿にする者もいなかった。
SF
公開:21/07/25 13:13

まるちーず( チェンマイ(嘘) )

『ショートショートでひらめく文章教室』を読んで書き始めました。
文章書けるようになりたいです!!

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