指の男

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「俺、穴を見ると興奮するんだ」
 おいおい。甲子園への挑戦を終えた真昼間のファミレスで切り出す話題じゃないぞ
「そっか、でも男ってみんな、そういうとこあんじゃん」
「指。入れたくなるんだ」
 いけません。ソーシャルディスタンスが確保されているとはいえ、子供もPTAもいらっしゃるんだぞ。
「で、入れたの?」
 って、何食いついてんの俺
「うん」
 はにかんで『うん』じゃねえっしょ
「蝉の。蛇の。石垣の。道路の。砂浜の。ドーナッツの、竹輪の。昨日は砂浜の蟹の」
「え~っと、人間ではない?」
「穴ならなんでもいいんだけど人間の場合は、ほら、許可とか」
 うん。一線は超えてない
「で、悩みって?」
「指が太すぎること」
 ああ。おまえキャチャーだもんね。って、俺の指を見るな
「お前の指でなら試せる穴がまだまだ無数にあるんだよ」
「へえ例えば?」

 そして、俺たちバッテリーの新しい挑戦が始まった。
その他
公開:21/07/25 10:07
シリーズ「の男」

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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