見慣れぬ参列者 -Side B-

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指定の口座に入金すると説明にあった通り『その記憶』が突如現れた。

29歳のある日、未来からきたと名乗る男に説明され
自分の葬儀に参列するように言われたのだ。
怪しむ私は謝礼に目が眩み車に乗り、
いつの間にか連れて行かれた未来にいた。
斎場につくと最後列に座る。
年老いた自分の遺影を凝視していると
男に声を掛けられ驚きその場を出てしまった。

50年以上前の記憶なるが私に声を掛けて来た男の顔は
今しがた病室に見舞いに来ていた息子のソレだった。
自分の居ない未来は当然体験出来ないが
記憶という形で私は自分の未来を体験したのだ。
まったく変わったサービスがあるものだ。
でも自分の葬式の雰囲気が分かってよかった。
明日、看護師にお願いして遺影の写真を撮ってもらおう。
若かりし自分に見られると思うとなんだかニヤけてしまうかもしれない。

ああそうだと、先程書き終えた遺書に一文を付け加えた。
SF
公開:21/07/26 06:39
更新:21/07/28 09:55

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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