あえない、と、あいたい。４

○×駅の改札前に、男が一人、途方に暮れたように立っていた。男と空港から同じバスで来たサラリーマン風の男性と顔を見合わせ、困りましたね、とつぶやく。サラリーマンがスマホを出して電話をかける。迎えに来て、と言っているのが聞こえて、男――ハラダは、その手があった、とばかりにスマホをいじり始める。書いては消し、書いては消しをくり返し、結局送ったのは、絵文字も何もない、無機質で業務連絡的な、文字だけのメール。ほっと息を吐いて、腕時計を確認する。一分もたたないうちに、三回、腕時計を確認している。四回目の確認が終わると同時にハラダのスマホが震える。画面を見ると、そこに並んでいたのは、ハラダのメールよりもさらにそっけない、おう、の二文字。