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17時のチャイムと共に文庫本を閉じる。夏休みのほとんどを僕は街の図書館で過ごしていた。
今日も結局、彼女は来ない。
◇
「君はこれを読みなさい」
見知らぬ女子が夏目漱石の「坊ちゃん」を差し出している。
「坊ちゃんというのは君でしょ?」
髪型を揶揄した僕のあだ名を知っていた。イタズラとも思ったが、目を通してみることにした。
主人公は僕とは随分違った。
囃されて二階から飛び降りたり、ナイフで自ら小指を切ったり、無鉄砲な奴だ。
「赤シャツは許せない!」なんて
彼女と話ができて楽しかった。
「漱石は『それから』も面白いの、今度貸したげる」
それきり彼女は姿を見せなくなった。
◇
夏休みが終わり二学期初日、
隣のクラスの小日向清子が転校したことを知る。
僕の机に置かれていた『それから』は『坊ちゃん』の続編ではない別の話だと知り、内容は全く入ってこなかったけれど、なぜだか涙がでた。
今日も結局、彼女は来ない。
◇
「君はこれを読みなさい」
見知らぬ女子が夏目漱石の「坊ちゃん」を差し出している。
「坊ちゃんというのは君でしょ?」
髪型を揶揄した僕のあだ名を知っていた。イタズラとも思ったが、目を通してみることにした。
主人公は僕とは随分違った。
囃されて二階から飛び降りたり、ナイフで自ら小指を切ったり、無鉄砲な奴だ。
「赤シャツは許せない!」なんて
彼女と話ができて楽しかった。
「漱石は『それから』も面白いの、今度貸したげる」
それきり彼女は姿を見せなくなった。
◇
夏休みが終わり二学期初日、
隣のクラスの小日向清子が転校したことを知る。
僕の机に置かれていた『それから』は『坊ちゃん』の続編ではない別の話だと知り、内容は全く入ってこなかったけれど、なぜだか涙がでた。
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公開:21/07/23 09:08
更新:21/07/23 09:19
更新:21/07/23 09:19
夏休みシリーズ④
空津 歩です。
ずいぶんお留守にしてました。
ひさびさに描いていきたいです!
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