懐かしのおもちゃ

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祖父の葬式で、妻と息子を連れて田舎へ帰った時のこと。
息子に、以前から話していた駄菓子屋というものを初体験させてやった。息子はまだ五歳。田舎は退屈だろうと、カゴに入るだけ、お菓子もおもちゃも買ってやった。

葬儀場で、息子はご機嫌に駄菓子を食べ、親戚とおもちゃで遊んでいた。駄菓子屋へ連れて行ったのは正解だった。
「そろそろお坊さん来るから、仕舞いなさい」
俺は親戚に礼を言い、息子を席に連れて来た。
「パパ、まだ、あそこ」
息子は前の方を指差す。その時、お坊さんが会場へ入り、式が始まった。俺たちに挨拶したお坊さんは、お経を読むべく、前方の座布団へ向かう。

そして俺は見つけてしまった。
今にも腰掛けようとする座布団に乗った、駄菓子屋のブーブークッション。
静まり返っていた式場で放たれた軽快な音は、それはそれはよく響いた。
その他
公開:21/07/26 18:00

お弁当係

2021年7月、投稿開始。
小説を読むのが好きですが、書くのも楽しそうで始めてみました。
読んでいただければ幸いです。
 

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