いつかの月曜日

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「明日は火曜日、君のカレーも楽しみだ」

夫は子供のようにはしゃぎ、似合わないエプロン姿でキッチンに立つ。日頃のお礼にと月曜日はいつも彼が料理を作ってくれた。男料理で少し味は濃いけれど、私には何よりのご褒美だった。

「来週から夏休みにしたから南の島にでも行こう」

南の島というのが少し子供じみていて、浮き輪とゴーグルを装着した水着の彼が海に走るのを想像すると少し笑えた。

「気に入ったら住んでしまってもいい」

そんな夢物語みたいな事も、彼がいうと本当になりそうで不思議だ。

「パスタの具と夢は大きな方がいい」

不揃いな野菜がごろごろ入った彼特製のパスタを食べながら、南の島へ想いを馳せた。

次の日、あれほどカレーを楽しみにしていた彼が帰ってくることはなかった。

あれから何年経ったろう。

南の島行きのペアチケットは、棚にしまったまま。

未だ来ぬ夏休みを待っている。
公開:21/07/24 20:09
更新:21/07/24 20:12
初投稿作品 「月曜日はいつも」より 今日でSSG1周年! いつもありがとうございます! 夏休みシリーズ⑥

空津 歩( 東京在住 )

空津 歩です。

新シリーズ「人喰い病院」はじまりました。

荷物
破顔
秘密
長老
抗争
皇帝
報道

マイペースに描いていきたいです!

SSG1周年!

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https://twitter.com/Karatsu_a

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