夏は合併号がループする

風鈴の音で目を覚ます。8月の風が読みかけの週刊漫画雑誌のページを捲る。主人公の少年が本の世界に迷い込む見開きに「次回！絶体絶命！」の煽り。この時期合併号が多い。来週は休刊。口惜しいが漫画家先生にも盆休みは必要だ。

主人公が異世界に迷い込んだり、呪術で戦う作品、海賊が侍の島を冒険、恋愛漫画の幼馴染ヒロインが可愛らしい。

僕には特殊能力も強い仲間も愛しのヒロインもいない。夏休みの怠惰が退屈に繰り返すだけだ。

「そんなことない。あなたは素敵よ」
漫画のヒロインがベッドに寝転がる僕を後ろから抱きしめた。
「貴様を倒すのは俺だ！」
「お前、仲間になれよ」
次々現れる漫画のキャラ、僕は漫画の世界に迷い込んでしまったようだ。外では火山が爆発し、怪獣が街を闊歩する。

空から大きな目が退屈そうにこちらをみている。大きな手でページが捲られる。

「…夢か」

風鈴の音で目を覚ます。8月の風が…