見知らぬ客の肖像

父は小さな本屋を営んでおり、私も時々店番に駆り出されます。
顔馴染みの客ばかりで、見知らぬ人が訪れることは稀です。
私には最近気になる客がいます。
近所では見かけない、私と同じ年くらいのとてもかわいい女の子です。
偶に一人で訪れては必ず数冊の本を買っていくのですが、本の選び方がちぐはぐなのです。
難しそうな学術書と少女小説、下世話なゴシップ誌など。
来られる日が限られるようで、欲しい本が次の日には入荷されますよと言っても残念そうに帰っていき、しばらく見なくなります。
父も気になる客のようで、私がいない時に店に来ても父から話を聞くことができました。

ある日、朝刊を見て父と顔を見合わせました。
私たちの町の城に住む末の姫が隣国へ興入れするという記事には、昨日初めて2日続けて店に訪れ、少女小説の最後の巻を買っていったー慌てていたのか髪に葉っぱをつけていたーあの子の肖像画が添えられていました。